ロシア・ウクライナ問題の影響で、3月7日NY原油市場は国際的な指標となるWTIの先物価格が一時1バレル=130ドル台まで上昇し、2008年8月以来、13年半振りの高値をつけた。
依然として、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに対し国際的な金融システムである国際銀行間通信協会(SWIFT)から除外など、欧米各国が経済制裁を加えるが、制裁を強めれば強める程、ロシアの主要輸出品である(原油・天然ガス・穀物)の市況が高騰している。
これによりガソリンや灯油価格は勿論の事、石油を燃料とする工業製品の値上がり、製造業のコスト増が見込まれる。
過去1973年では、イスラエルとアラブ諸国による4度目の戦争である第4次中東戦争が勃発し第一次オイルショック、1979年にはイラン革命を起因とする第二次オイルショックが発生した。
日本では当時、直近で4.9%であった消費者物価指数が1973年に11.7%、1974年は23.2%にまで上昇し、「紙が無くなる」と噂を聞き付けた消費者による紙製品の買い占めが原因で、全国の小売り店から紙製品が消えたとも言われている。COVID-19の影響でマスクやトイレットペーパー及び、紙製品の在庫が不足した事態は記憶に新しい。
WTI月足チャートを表示すると、ここ2、3年の原油価格の推移は異常であると言える。2020/4/20に限っては、5月限月のWTI原油先物価格が-36ドルと史上初のマイナス値をつけた。
この背景にはCOVID-19の影響を受けた世界経済の悪化により
→原油需要は急激に減少。
→減産の速度が追い付かない。
→原油の在庫過多。
→保管場所が足りなくなる。
→原油を保管する料金が跳ね上がる。
こうした一連の流れのもとで更に原油価格が下落基調であった為、原油保有はデメリットとなり、先物に損失覚悟の売りが膨らんだと考えられる。
その後は一時マイナス価格であった原油価格も、ワクチン普及による先行きの需要回復が織り込まれたうえ、OPECプラスによる大規模減産の継続とその順守、米シェールの生産停滞による供給の抑制、金融緩和継続等に伴う投資家マインド改善により順調に回復していった。
そして、60ドルから80ドルは上値が重く上げ幅も限定的で受給の均衡点だろうと考えられる価格帯を推移していた所に、ロシア・ウクライナ問題が飛び込んできた。その結果的に80ドルを大きくブレイクアウトし、一時130ドル台に乗せた。
今後の展望として当面の間は、経済制裁に伴うロシアからの原油供給が滞るとの懸念が原油価格の上昇圧力になるだろう。
また、欧米の大手石油会社がロシアから相次いで撤退を表明しているほか、米国が原油禁輸措置をも辞さない構えを示しており、供給を巡る不透明感は容易に払拭されない。
加えて各国は石油増産計画を打ち出すものの過去の局面をみると増産には時間を要している他、設備の老朽化などから実際の増産量は限定的であると考えられる。